2012年4月30日月曜日

遠い日本


スペイン文化を扱うテーマパークで一時期的に働くことになったが、それが一挙に名の知られないスペイン人アーチストの生活を保障するものではなかった。しかしながらヨーロッパでの大不況が多くの人々に影響していることを鑑みれば、そこで働くことは私にとっては疑いもなく、安らぎの空気を吸える機会となった。

次第に日にちが経つにつれ、この空気は私にとって今まで吸ったこともない極上の澄んだ酸素に変化していった。じつはその空気は、辺りに植えられてあるジャスミンや太平洋や漁村の木造家屋から漂う濃い香りから来るものではなかった。それは、近くに生い茂る竹林、蛙や色とりどりの魚が生息する川の匂い、亀、日暮れになる近くを闊歩する白いエンジェルにさえ見える寂しそうな白くて大きな鷺(サギ)から来るものでもなかった。それは、私が遠く離れたエキゾチックな国から来ていると、その地の人たちが想像しているときに発せられる、その不思議な幻想的感覚から来ていたのだった。

テキスト:アルベルトタラゴ
日本語訳:岡田利雄